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─ 魔法の教え

8月16日
読了時間: 3分

8月も中旬に差し掛かると夏本番、甲子園の季節ですね。

普段スポーツ観戦はあまりしない私ですが、風物詩として作業の合間にラジオ越しに楽しんでいます。


若人たちのひと夏にかける想いに触れると、野球部員だったこども時代を思い出します。


部活に入った切っ掛けは、体を動かしたかったのか、友人に誘われたのか──

今となってはもう曖昧ですが、どうやら私は野球をがんばる才能には恵まれなかったらしく、あまり優秀な生徒ではありませんでした。

熱心に指導してくださる顧問の先生の言葉もあまり耳に届いていなかった気がします。


ただ、そんな私にも不思議と響いた言葉がありました。



──「道具を大切に扱えば上手くいく。」──



その日から私は練習後にメンテナンスのクリームを使って、毎日毎日それはそれは一生懸命にグローブを磨いたものです。

クリームが入ると砂埃や汚れがみるみる落ち、手触りもしっとりしてくるとなんだか本当に上手くいくような気さえしたのです。


今思えば革製品の魅力に惹かれた原点だったのかもしれません。

革道具に心が向くようになり美術学生時代にモチーフとして選んで描いたグローブ、今回のサムネイルにはその時の一枚を使いました。



こんなことを言うと叱られてしまいそうですが、

野球そのものよりメンテナンスの方がずっと楽しく感じたのを今でも覚えています。


肝心の練習の方にはいまいち熱が入らないので、3年間のほとんどをベンチで過ごしましたが、それでも、あそこから試合の内容にあーだこーだ、時にはその晩放映するTV番組の話で盛り上がっていた──

そんな他愛もない時間もまた楽しい想い出です。



──「道具を大切に扱えば上手くいく。」──

今なら先生が伝えたかった本当の意味が分かる気がします。



自身が触れる道具に感謝し、整えることで気持ちを引き締め、日々の練習に自信を持って励む事ができる。

多分、そう伝えたかったんですよね。

当時の私は間違った方向に解釈し、魔法を期待していたように思います。


グローブがそうであったように、

靴も、鞄も、メンテナンスで長持ちする事は勿論、日々の生活が整っていく。


仕事に出る前に綺麗な靴に足を通す──

大切な場面に行き届いた鞄で向かう──


そんな些細だけれど、大切な積み重ねが

日々に彩りを与えてくれるのではないでしょうか。


野球はすぐに辞めてしまったけれど、若駒ジュニアでの教えは今も活きています。

暑くなりきれない釧路の夏に、ラジオを越えて今年はどんな熱気が届くのか。

工房の静けさの中で、そっと耳を澄ませています。

                        修理のアトリエRondo / Fumi

 
 
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